新型コロナウィルス問題においてのメンタルヘルス

メディアでは連日新型コロナウィルスのニュース一色だし、どんどん身近になってきていることもあって日本全体がパニックに近い感じになってきているような感じですね。

では、新型コロナウィルス問題でパニックになった人から相談を受けたらどうするか…。

やっぱり、「あきらめる」ことを薦めるでしょうね。

と言っても、一般的に考えられがちな「諦める」ではありません。

「あきらめる」というのは、元々仏教の言葉だそうで、「明らめる」、つまり物事を明らかにすることだそうです。

ここで言うのも、それなんですね。

まず、新型肺炎に罹ってしまう確率は、多少なりとも有るということを「明らめる」。

どうしてかというと、「絶対に(罹らないように)」という言葉は、却って強度の不安の元になりやすいんです。

次に、それに対してどれくらい心配したらいいのかも「明らめる」。
ちなみに、日本では交通事故死も随分減ったとはいえ、やはり年間3000人を超えていますし、このところ肺炎で生命を落とす人は年間約10万人です。

さて、「では自分は、今まで交通事故や肺炎に対してどれくらい心配していたか?」を考えるといいのではないでしょうか。
それに対して、今回の新型肺炎に対してどれくらい心配しているのか?
自分にとって合理的な心配の仕方って、どれくらいなのかを考えるというのは、そういうことなんですね。

もちろん、だからと言って「楽観的に考えろ」というつもりはありません。
新型コロナウィルスは感染力が非常に強力で、しかも重症化しやすい、対応するワクチンや薬がないなどインフルエンザよりはるかに厄介な相手です。
ただ、だからと言って我々に未来がないわけではありませんし、パニックになったからといって罹らなくなるというわけでもないのです。

そして、今出来ることは何かについて「明らめる」。

ちなみに新型コロナウィルスが従来のウィルスと同じとは限りませんが、一般的にはウィルスは高温多湿に弱いので、私達の事務所(教室)には加湿器を2個、空気清浄機は従来有ったものに加えもう1台追加、そしてエアコンは24度に設定しています。

もちろん除菌シートやマスクも備え付けてありますし、これと同じレベルに家も設定しています。
あとは出来るだけこまめに手洗いをして、不要不急な用事で人ごみの中には行かない!

つまり、「今できることをしっかりとやる」しかないんですね。
それでダメなら、「諦める」。「罹ったら罹った時だ」と開き直る。

不安にかられまくって神経質になったからといって、新型コロナウィルスが同情してくれるわけではないんですよね。

明日の不安を一日中していたら、人生のうち不安な日が1日増えるだけの話です。
それよりも、やっぱり大事なのは「今 ここで出来る事」だと思います。

新型コロナにおける不安やストレスに有効な認知療法

ところで、ここまで深刻な状況ではない頃に、WHOは咳などの症状のない人に対し、「いかなる種類のマスクの利用も推奨しない」との見解を発表しましたが、それについて僕(鷲津)は下記のように3月前半にブログに書いています。

「もちろん医療現場での調達に支障をきたす恐れがあるから、ということはわかっているが、僕はこう思う。
まず、ウイルスはマスクの網目より小さいから意味が無いとか、いや空気感染じゃないのだからウィルスを含んだ飛沫には有効なので付けた方がいいとかいういろいろな意見があるが、僕は医者じゃないのでそのあたりの議論はちょっとおいといて、心理的観点から話したい。

まず、マスクをするとエチケットとしてのメリットがある。
「私は熱もないし元気なつもりなんだけど、万が一のことを考えて、人に移さないように気を使っています」という意思表示だ。
つまり、自分の為というより、他の人のことを考えていますよということになる。

次に、「付けないよりは付けたほうがまし」という程度だという意見が医療関係者から多く出ているが、ここが大事なのだ。
「まし程度なら付けなくてもいい」という考え方を、心理学では白黒思考とか二分思考と言う。
オール・オア・ナッシングという考え方だ。
これは鬱や不安障害の人に多くみられる。

実は大事なのは、ここで言われている「まし」(モア・ベター)という考え方なのだ。
「真っ白」とか「真っ黒」なんて、世の中にはそんなにはない。多くは「グレー」なのであって、そのグレーの中で、どうモア・ベターを目指すかが大切なのである。
もっとも、不安にかられてマスクを求め、あちらこちらの薬局を回ると、心理的には益々不安が増大するし、それこそ本当に必要な人に回らなくなるので、それはどうかと思うが。
そうやって考えると、先日書いた「手作りマスク」って、いいのではないかということになる。
エチケットとしてのイメージも良いし、洗って大事に使うというのも良いことだと思うし」

(以上 鷲津秀樹ブログより引用)


しかし、最近のニュースやコメントを見ていると、いちいち過度の不安や恐怖を煽るようなコメントを出す人が如何に多いかもよくわかりますね。 そしてそれに惑わされて不安に陥っている人も如何に多いか…。

ちなみに、ベルコスモ・カウンセリングとNPO日本次世代育成支援協会が行っている心理カウンセラー講座( http://bellcosmo.net/kouza.html )では、3月はD・バーンズ博士の理論を学んだのですが、彼は「認知療法においては【認知の歪み】に気付くことが大切だと言っています。

バーンズ博士は、その【認知の歪み】の主たるものを10個挙げました。

1.全か無か思考(オール・オア・ナッシング)
2.過度の一般化
3.心のフィルター
4.マイナス化思考
5.結論の飛躍
 a.心の読み過ぎ
 b.先読みの誤り
6.拡大解釈または過小評価
7.感情的決め付け
8.「すべき」思考
9.レッテル貼り
10.責任の押し付け

もっともカウンセリング講座では、これだと数が多くて却ってクライアントが迷うのではないかと考えているので、下記の5つに絞って考えることを、お薦めしています。

1.完全主義(全か無か思考を含む)
2.過度の一般化
3.「すべき」思考
4.推論の不安
5.ディスカウント

そして今回のコロナウィルスの件においても、この5つでかなり対応できます。

ちなみに、南半球でも感染者が出ていることを基に「夏になっても収まらない」という声をよく聞きますが、これは「収まる」か「収まらない」かの二分思考、つまり1の「完全主義(全か無か思考を含む)」に陥っています。

なお、この例だと、中国と最も往来の多い東南アジアなどの暑い地域と、冬真っ最中の地域との感染の広がりや死亡者数を比較してみると、「夏になっても収まらない」という思考がオール・オア・ナッシングだと気づくことが出来ます。

暑い地域の方が、感染者や死亡者数は比較的少ないんですよね。

要は「完全に収まる」という基準で考えるのではなく、まずは「減ればいい」という考え方が大事なんです。
ブログでも書いた「モア・ベター」の発想です。

また、「暑い沖縄でも感染はあるのだから、日本では夏になっても収まらない」という人もいますが、それは「暑い沖縄でも感染はある」という1つの事実を「日本中の夏」に当てはめてしまっています(しかも単なる推論で)。

こういうのを『過度の一般化』と言います。

こんなの、当てはめようとしたらいくらでも作れますよね。

たまたま名古屋の感染者が味噌煮込みうどんが好きだったから「名古屋に感染者が多いのは、コロナウィルスは『味噌煮込みうどん』が好きな人がよくかかるからだ」とか、「好きでもないのに、すぐに『愛してる』という人間がかかりやすい。死亡者数はイタリアやスペインが多くて、ドイツや日本が少ないのを見ればわかる」とか…。


「心配」や「不安」に有効な「スケーリング」

さて、「心配する」というのは確かに必要なことですが、「人を過度に心配させる」というのは勘弁してもらいたいものですね。

そこで、もう一つご紹介したいカウンセリングの手法がスケーリングというやり方です。

ニュースでは毎日毎日コロナウィルスでの死亡者を大々的に伝えています。
もちろん亡くなられた方やご家族の方々の心情は察するに余りありますが、ここでは大変申し訳ありませんがドライに数字の話をさせていただきます。

この下記グラフは、厚労省が国立感染症研究所のデータを引用して発表したものです。
ちなみにグラフ右下の202009 というのは2020年の第9週を表しています(2020年2月24日から3月1日)。



このグラフを見ると今冬は去年や一昨年と比べると、インフル感染者が激減しているのがよくわかります。

ところで日本ではインフルエンザで昨年(2019年)1月に1685人、2月に1107人亡くなっています(肺炎を入れたらもっとすごい数になるわけです)。
では、今年の1月と2月はどうなるでしょう(数字はまだ出ていませんが)?

グラフの定点調査では感染者は半分くらいに激減していますが、仮にもしインフルの死者が例えば昨年対比2割減ったとしたら、1月2月で死者数は約560人減ることになるということですよね。
つまり、新型コロナで危機感を持ったため、本来インフルで危険な目に遭う人がかなり減った、亡くなる人が減ったということになります。

こういうことを言うメディアは、あまり見かけません。
つまりマイナスの要素だけ大声で深刻に言って、不安を煽りまくるニュース番組が多いというのは、こういうことでもよくわかります。

不思議なのが、どうしてメディアはイタリアやスペインやニューヨークの映像ばかり流し、シンガポールや台湾の映像を流さないのか、ということです。
メディアやネットの書き込みに煽られて、不安や恐怖で沢山の人のメンタルが悪くなる人が増えているようですが、それががメディアの役割なのですか? と言いたくなりますね。

ついでに言わせていただくと、我が国の政府も、アジア諸国から何かを学ぼうという姿勢が全く見えません(負けた気がするんでしょうか?)。

ちょっと気になったので、東及び東南アジアの国々(中国以外)の一部を死者数で調べてみると、死者数の多い順にこうなりました。

韓国(4月3日)174人
フィリピン(3日)107人
マレーシア(3月31日)37人
タイ(2日)13人
シンガポール(3日)5人
台湾(3月30日)  5人

もちろん、老齢者の割合が多いかどうか、平均寿命の違いとかがあるのかもしれませんが(しかしシンガポールの平均寿命は日本を上回り世界1位、人口密度は東京都の5541人を上回る6776人)、欧米の死者数と比べると桁違いに少ないですよね。

ちなみにシンガポールは、人と人との間隔を一定程度あける「社会的距離」政策を徹底することで、外出禁止などの厳しい措置を4月2日までは免れていました。
また、台湾のマスク生産量は、近く人口の6割以上をカバーする日産1500万枚(人口2378万人)に達するそうです。

我々も「学ぶこと」は沢山あるのではないでしょうか。
そして、それが出来たら不安はもっともっと減るはずですし、自信もつくはずです。


一休さんの
「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候 死ぬ時節には死ぬがよく候
これはこれ災難をのがるる妙法にて候」

という境地にはとても達することはできませんが、「これはこれで、いろいろと考える良い機会だ」と思うことができればよいのではないでしょうか。

何度も言いますが、今大事なのは合理的な「不安」を持ち、その時点その時点で適切な行動をとることです。
何年も続く台風は、ありません。



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和歌山県主催のネット依存防止セミナーの講師を務めました

平成30年1月28日(土)に和歌山県主催の「ネット依存防止セミナー」が開かれ、講師を務めます。
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稲沢市広報に掲載されました

稲沢市の「いじめ・不登校対策委員会」主催の小中学校の先生方の研修会で、『ネットいじめ』について講演させていただいた内容が、稲沢市の広報で紹介されました。
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名古屋テレビの報道番組「UP!」でコメントしました。

名古屋テレビの報道番組「UP!」で、ネット・スマホゲームの問題点についてお話しました。(2016.8.25)




名古屋市「保育リスクマネジメント研修」の講師を務めました。

名古屋市の約200名の保育士の方々に、保育リスクマネジメントのお話をさせていただきました。(2016.8.24)






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稲沢市広報に掲載されました

稲沢市の「いじめ・不登校対策委員会」主催の稲沢市の小中学校の先生方の研修会で、 『ネット・スマホ依存』について講演させていただいた内容が、稲沢市の広報で紹介されました。
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■講演実績例

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田原青年会議所
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国分寺青年会議所
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 「関東地協セミナー」
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 エゴグラムとコミュニケーション

碧南青年会議所
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南山経済人クラブ
 心理から見た「好きな人にモテる方法」
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